2015年12月26日

条虫の覚醒 その2

異型細胞のルーツに迫ります。

Malignant Transformation of Hymenolepis nana in a Human Host.
N Engl J Med. 2015 Nov 5;373(19):1845-52.
Muehlenbachs A, Bhatnagar J, Agudelo CA, Hidron A, Eberhard ML, Mathison BA, Frace MA, Ito A, Metcalfe MG, Rollin DC, Visvesvara GS, Pham CD, Jones TL, Greer PW, Vélez Hoyos A, Olson PD, Diazgranados LR, Zaki SR.

2015年12月16日

その2

その1からつづき

かわうそ:形態学的には、malignancyなのでしょうけど、細胞がけっこうちっちゃいということから、真核単細胞生物の感染なんかも鑑別に挙げたいようです。よくわからない色々な病原菌があげられています。

残念ながら剖検は拒否されましたので、これまで採取された検体を用いて、この病変に迫ろうというのが実はこの論文の目的なのです。こういう症例報告では珍しいと思いますが、MethodsやResultという項目があります。

で、Resultに移りますが、まず、培養では何も生えてきませんでした。
ついで、DNA検査では、99%という高い同一性をもって、H. nanaという条虫の一種のDNAが検出されています。先ほど、病理所見を見た時の予想では、真核単細胞生物の感染なんじゃない?と言われていたので、「unexpectedly」と書いてあります。条虫っていうのは当然多細胞生物ですし、でもそんな組織構造は一切標本内にないのでおかしな話ですよ、これは。

かば:は~。

かわうそ:免疫染色でも確かめられています。巣状になった異型細胞の塊のところが、赤く染まったり、逆にその周囲の正常リンパ節組織が赤く染まったりという写真が並んでいます。これは、H. nanaの抗原抗体反応で染めた場合とヒトの抗原抗体反応で染めた場合の違いだそうです。異型細胞がH. nanaのタンパク質を持っていてヒトのは持っていないということの証拠ですね。

次のFig 3は全くわかりませんでしたが、多分、DNAだかRNAが、どれくらい遺伝子変異があるのか、というものを比較して見せているようです。この辺は慣れていないので理解できません。すいません。

というわけで、これは非常にまれな症例なのですが、条虫が癌になって、その癌細胞が人間の中で浸潤増殖していると言いたいらしいです。

かば:条虫ではなく、条虫の細胞が増えているんですね。寄生した条虫がゾンビみたいになって増えているということ?

かわうそ:ゾンビかぁ。でも、まあ、そういうことなんでしょうね。

その3へつづく