2015年11月11日

エボラ出血熱疑い患者を診るということ その1

MGHケースカンファレンスです。まずは現病歴まで。

CASE RECORDS of the MASSACHUSETTS GENERAL HOSPITAL.
Case 28-2015. A 32-Year-Old Man with Fever, Headache, and Myalgias after Traveling from Liberia.
N Engl J Med. 2015 Sep 10;373(11):1060-7.
Biddinger PD, Hooper DC, Shenoy ES, Bajwa EK, Robbins GK, Branda JA.

2015年10月14日

その1

かわうそ:今日は、32歳の男性の発熱、頭痛、筋肉痛です。問題は、リベリアから帰ってきて8日後にこの症状がでてきた、というところなんですよね。タイムリーな話題です。
ちなみに、リベリアって国をご存知ですか?(*´∀`*)

かば:いいえ。

かわうそ:エボラ出血熱の流れでこのケースカンファなので、当然西アフリカですよね。

かば:九州で言うと長崎あたり?

かわうそ:九州で言うと長崎なのか熊本なのか…。あんまりアフリカと九州を合わせて考えたことがないので…。すいません。でも多分その辺りです。ギニアとかシオレラ…

かば:シエラレオネ、ですね。(-_-;)

かわうそ:それです。そのあたりの一角にあります。


確かに長崎あたりかもしれませんね。
で、リベリアってのはけっこう面白い国です。アメリカの解放奴隷が作った国なんです。

かば:へー。

かわうそ:リンカーンの奴隷解放宣言したときに、一部の人がもどって独立したんでしょうね。
アフリカの国っていうのは、たいてい第二次世界大戦のあとに独立した国なので、それらと比べると歴史のある国です。アフリカではエチオピアの次に古い国のようです。ちなみに、エチオピアっていうのは日本の次に長い歴史を持つ国とされています。
でも、歴史が長いから落ち着いた国かというとそうでもないみたいでして、ウィキペディアで調べてみると、つい最近まで内戦していたとか、舗装された道路はほとんどない、みたいに書いてあります。

かば:ちょっと西伊豆の仲田先生みたいなマクラですね?

かわうそ:ありがとうございます。(^ω^)
そんなリベリアから帰ってきた人なんですけど、リベリアに3ヶ月も行っていた理由は、エボラアウトブレイクの対応のためのNGOの一員として働いていたからなんです。ただ、患者と直接の接触はなく、遠くから見ていただけのようです。ですから感染のリスクは低いはず、という本人の自己申告があります。
この人は8日前にリベリアから帰国していますが、アメリカはやっぱりすごいな、と思いますね。エボラウイルス感染モニタリングプログラムというものがあって、それに則ってフォローされています。具体的には、1日2回の体温を測定して、体調とともにしかるべきところに報告するというものです。これを潜伏期間の3週間の間続けるわけです。
で、その日の朝、38度の発熱があって、悪寒を感じて、頭痛とか筋肉痛とかがあるということを報告したところ、PPE、personal protecting equipmentに身を包んだ救急隊員が颯爽と登場するんです。隔離搬送用のカプセルと患者用のマスクとか不透過性のつなぎ服を持ってきて、この患者は病院に運ばれたというわけです。

かば:すごいですね。

かわうそ:患者さんは比較的元気そうなんですけどね。意識清明で見当識障害なく、会話も可能です。あと、次の記述も参考になりますね。患者から6フィート、だいたい2m離れたところから問診をとったと書いてあります。

かば:すごい。日本だったら、たぶんこうやって保健所に連絡したら、場合によっては、すぐ近くの病院に行って下さい、と言われて終わりかもしれないですね。タクシーとかに乗って自分で行けと言われかねないですよ。恐ろしい…。

かわうそ:そうですね。この辺りの対応の仕方は、ちゃんとしていてすごいですね。感動します。

その2につづく