2015年10月19日

なつかしき「友人」との再会 その2

CASE RECORDS of the MASSACHUSETTS GENERAL HOSPITAL.
Case 27-2015. A 78-Year-Old Man with Hypercalcemia and Renal Failure.
N Engl J Med. 2015 Aug 27;373(9):864-73.
Powe NR, Peterson PG, Mark EJ.

2015年9月9日

その2

その1からつづき

かわうそ:さて、どんなものに注目して鑑別診断を考えていきますか?

ベンガルトラ:高Ca血症を来す疾患かな。

かわうそ:そうですね。まず、高Ca血症をきたす原因にどういうものがあるか、ということで鑑別疾患を上げていこうということです。さっきすでにPTH、パラサイロイドホルモンが話題になっていましたね。高Ca血症の場合、まずはPTHがあがるもの、あがらないものにわけて考えましょう。
今回はPTHは正常なので、上がらない疾患だけ考えればよいと思うんですが、ここではけっこうなスペースを取って、PTHが上昇する疾患についても網羅されています。家族性とか慢性腎不全とか。
では、PTHが上昇しない高Ca血症には、どんなものがあるかご存じですか?

かば・きりん:…。

かわうそ:…。私もさっぱりわかりませんでした。
まず、悪性疾患ですね。骨髄腫とかは鑑別にあげたいですし、普通の固形がんでも骨転移とかがあればCaは上がります。あと、呼吸器ではけっこう有名なんですが…。

きりん:サルコイドーシスです。

かわうそ:そうなんです。サルコイドーシスで高Ca血症があるのは有名ですよね。

かば:そういえば、サルコイドーシス疑いではCaを測りますね。

かわうそ:実は、採血検査でACEが上昇しているというのがあります。これを見てしまうと、みなさんなら一発で診断に至りますよ。
内服薬も要注意です。ビタミンとか、サイアザイド利尿薬は高Caをきたします。あと甲状腺疾患もチェックしろとのことです。これは正常でした。
あと、肉芽腫性疾患ということで、結核です。

かば:そういえば、ツベルクリン反応の陽転化がありましたね。すごい、つながっているんですね。…でも、サルコイドーシスではツ反は陰転化しますよね…。

かわうそ:そうですね。ちょっと解説ほしいところですけど、スルーされています…。
もう一つ、腎不全でも鑑別疾患をあげていきましょう。
腎不全の場合、腎前性、腎性、腎後性にわけてホニャララと、親切なことにここでもかなりスペースを取っています。尿中のNaでわけるんだ、とか。でも、なにせ腎生検をしていて、間質に肉芽腫様病変があるということがわかってしまっていますので、腎性ですよね。

かば・きりん:はははっ。

かわうそ:この2つを来す疾患に何があるかということを考えると、残るのは悪性疾患か肉芽腫性疾患です。今の段階ではどちらがより可能性が高いと思われますか。

かば:腎生検の結果からすると肉芽腫性疾患です。

きりん:あと、経過の長さからすると悪性疾患は可能性が下がるように思います。

かば:縦隔リンパ節腫大が2年前からあるんでしたね。

かわうそ:そのとおりです。

ベンガルトラ:PSAが上がってるのは?

かわうそ:えっ。ほんとですね。…、前立腺肥大があるのでスルーしていました。たしかに、経過のゆっくりとした前立腺癌などの悪性疾患は除外しきれないかもしれません。年齢や性別などの患者背景からすると、ちょっと合わない、癌の方が考えやすいという記載もあります。やっぱりサルコイドーシスなら、もうちょい若い女性の疾患という印象がありますね。また、腎生検の結果についても、リンパ腫ならこういう病理所見を取りうるようです。固形癌でも膜性腎症とかparaneoplastic glomerulopathiesというのがありうるとかいうことが考察されていました。
腎サルコイドーシスっていうのは、けっこう珍しいらしくて、サルコイドーシスの中でも1-2%だけ症状が出るようです。でも、剖検すると、サルコイドーシスの方の5割位には腎臓に病変があるようです。

きりん:ふーん。

かば:ベンスジョーンズ蛋白が出ていることについてはどうなんですか?

かわうそ:するどいですね。実は、最後の方まで多発性骨髄腫は疑って精査が続けられています。血液疾患は苦手なので、詳細は説明できないんですが、結論としては、7%の形質細胞というのは多発性骨髄腫の基準を満たさない、ということのようです。MGUSになります。

かば:サルコイドーシスとMGUSの合併ということですね。

その3へつづく