2015年9月14日

最近うわさのREVERT trial その1

Postural modification to the standard Valsalva manoeuvre for emergency treatment of supraventricular tachycardias (REVERT): a randomised controlled trial.
Appelboam A, Reuben A, Mann C, Gagg J, Ewings P, Barton A, Lobban T, Dayer M, Vickery J, Benger J; REVERT trial collaborators.
Lancet. 2015 Aug 24. pii: S0140-6736(15)61485-4.

2015年8月28日

その1

かば:今ちょっと話題になっている論文です。
いわゆる上室性頻拍の時のValsalva手技の成功率っていうのがあんまり高くない、5-20%くらいなので、何とかそれを上げる方法はないか、という研究です。上室性頻拍の治療といったら、アデノシンの静注とかもよく言われていますけど、あれってすごく気持ちが悪いというか。やっぱり一瞬脈がとまるので、やってるこっち側も嫌だし、患者さんもすごい不快らしいです。

かわうそ:そうですね。一回救急でやったことありますが、こわいですね。

かば:できれば、アデノシンとか使う前に何とかできたらいいなっていうのがあります。Valsalva手技は、臥位でやるのがいいとか、足をあげるといいとかはすでに言われていましたが、それを実際にちゃんとRCTでやってみたという論文です。AfとかAFとかは除外した上で、息を「フンッ」と止めるだけの人と、修正したValsalva法の人に分けています。
やり方がネットに動画で出ています(http://www.thelancet.com/cms/attachment/2035488647/2051082005/mmc2.mp4)。45度くらいで寝ている人に、圧力計でちゃんと40mmHgの強さを測って、15秒間息こらえさせて、終わったら二人がかりで足をあげて倒すんです。これがmodified Valsalva法で、これをやると改善率が抜群によくなったという報告です。普通のやり方だと戻ったのが17%だったのに対して、今のような、フラットにして足をあげるというのを最後につける方法だと、43%で半分近くが落ち着いています。ひっくり返すだけなので、特に副作用もなく、シンプルだしお金もかからないのでいいんじゃないですかね、という論文でした。

かわうそ:Valsalva法の理屈ってそもそもどういうものなんでしたっけ?(>_<)ゞ

かば:息こらえで胸腔内圧を上げて、静脈還流量を減らします。すると、一回拍出量が低下して血圧とかは一過性に下り、頻脈になります。
そのあと、息こらえを開放すると、一気に静脈血が心臓に戻ってきて、1回拍出量が増大して、頚動脈洞圧が上昇、迷走神経刺激で反射的に徐脈を引き起こします。
Modified法では、最初座位で息こらえすることで静脈還流を減らしておいて、息こらえ開放後に足をあげることで、より静脈還流量を増やそうという考えなんですね。

かわうそ:1回しかやっちゃだめなんですか。

かば:2回までいいみたいです。それ以上ならアデノシンやcardioversionになっていました。
ただそれだけなんですけど、すごいきれいにやっていますし、イギリスのERのDrが160人くらい関わっています。参加する人には今のビデオを見せて、やりかたを教えて練習しているようです。あと、リサーチナースが横にいて記録を取っているようです。SVTの定義もちゃんと載っています。inclusion criteria、exclusion criteriaもしっかりと記載しています。ランダム化は、完全な二重盲検というわけにはいかないんですが、どちらの群になるかはきちんと管理されています。
けっこう親切なことに、参加者の患者さんが外でまた発作に襲われた時のことも考えているんです。10mlのシリンジを渡していて、細い方を加えて息で内筒を押し出すように吹かせます。そうすると大体40mmHgになるみたいです。これも先ほどの動画にあります。

かわうそ:それで息こらえになるんですね。おもしろいですね。呼吸リハの患者さんに持たせてもいいかもですね。

かば:さらに、不整脈協会のチャリティーなんかも紹介していて、手厚いです。
1170人くらいエントリーされていますが、色々省かれていて、433人がランダム化されました。例えば、手技をする前に自発的に不整脈でなくなってしまった人とかです。ちょっと面白いのが、20人が登録されていないんですが、その理由が「救急外来が忙しすぎた」となっています。

きりん・かわうそ:ははは。

かば:あと、同意書をとったけど無くした、とかいうのも書いてあって、ここまで細かく記載しているのか、と感心します。

かわうそ:すごいですね。自分の研究ではここまでうまく書けなかったんですよね…。

かば:ここは意外に自分ですると難しいですよね。

その2へ続く