2015年8月1日

Physician-assisted dying

Unanimity on death with dignity--legalizing physician-assisted dying in Canada.
N Engl J Med. 2015 May 28;372(22):2080-2.
Attaran A.

2015年6月24日

かわうそ:実はこういう話題は興味あるところでして、今後も追っかけていくつもりです。現時点ではすぐに臨床に役立つような知識ではないんですが、たまにはこういうのもいいんではないかなということで、今回読ませていただきました。
NEJMにでてた、カナダでPhysician-Assisted Dying(PAD)が合法化されたことについての記事です。実は、年表の図にあるように、カナダ以外でもすでに合法化されている国や地域があって、PAD自体は目新しいものではないです。ただし、これが強調しているところは、裁判所で全員一致で合法とされたところと、国民の8割が賛成しているという、そのプレッシャー感ですね。
2016年には患者が医師の助けによる死を選べるらしいんですが、おそらくそういう安楽死的な処置に一番慣れていたり親和性のありそうなThe Canadian Society of Palliative Care Physiciansの会員があんまり乗り気でないようなので、いったいどうなることかと全く関係のない自分でもヒヤヒヤしています。

きりん:すでにPADが合法化されてるところでは、マニュアルとかガイドラインとかあるんでしょうか?何か悪用されそうですよね。

かわうそ:たしかに。「〇〇レジデントマニュアル」とか「熱病」みたいに、毎年改定されて市販とかされてる可能性だってありますね。

かば:ERっていうドラマで、安楽死が扱われてるの知ってます?中国系の、すごくできるけど野心家の医師が、父親が認知症になって困って、結局カリウムを静注して安楽死させるんです。同僚の医師と共謀して死亡診断してました。

かわうそ:ERで自分がおぼえているエピソードは、子どもの麻疹患者の話です。みんなが診断つかずに困っている時に、カーター先生がコプリク斑を見つけて一発で診断してました。「ハリソンに載ってただろ?」「全部読んだの?」「もちろん、当たり前でしょ!」、みたいな会話してたような記憶があります。たしか母親がワクチンの副作用がどうとか製薬会社の陰謀だとかギャーギャー言ってワクチン接種させてなくて、カーター先生に一喝されてました。病棟閉鎖とかすごく大事になってました。
この後の展開もけっこう好きで、まだまだ話したいんですが、このへんで話を戻します。
ここからの話の筋道がけっこう面白いんです。こういう終末期の話では、Autonomy、自律性が大切だとか言われるんですが、日本の場合はどうなんでしょうか?ちょっと実情にあわないとこがあるように思いますけど。

きりん:癌の告知だって、いまだに、ある程度の高齢者なら家族に先にしてるくらいですからね。本来はまず本人に話して、しかるのちに家族にも話すかどうかを本人と相談するのが正しいあり方のはずですけど。

かわうそ:ですね。あと、生命維持治療のさし控えと中止の違いについての倫理学的考察にも触れてます。僕らは、気管内挿管しないことと挿管チューブ抜去をものすごく大きな違いがあるように考えて区別してますけど、論理的に考えてみたらそこにはあんまり違いがないんだっていうことです。最終的に訪れる死という結果からすると大きな違いはない、という論理ですね。

きりん:知らないうちに空気に流されて、深く考えずにやっちゃってるってことですね。

かば:でも、やっぱり訴訟の問題とかはありそうですし、医療者側だけの問題ではないですよね。

かわうそ:まあでも、こういう論理はどこかで読んだことあるんですが、この先がまた、刺激的なメッセージで興味あります。私には初見でした。ここでは、セックスワーカーにコンドームを配るとかヤク中に注射器を配るとかと同じ論理で安楽死を論じてるんです。売春やヤク中をやめさせられないんでせめて感染症を予防しようという感じで、苦痛を伴う死よりもせめて管理された死をって話です。
こういう介入自体、日本ではあんまり受け入れられていないと思うんですけど。非常にドライというか、プラグマティックな考えというか。

かば:ブラックジャックのドクターキリコですね。あれだって、ものすごい誇りと技術をもってやってますよね。

かわうそ:手塚治虫の先見性ですね。
あとは精神疾患や認知症についてはどうするのか、元気な時の意思を尊重してよいのかとかにも言及されています。やっぱり難しい問題ですよね。姥捨山とか優性思想とかにつながりやすい危険な匂いがすることは否めません。
ちなみに、このPADに関しては、スイスのディグニタスが有名ですね。ネットの情報を語ってしまうのも抵抗ありますが、必要としている患者さんがいる一方で、黒い噂もあるみたいです。けっこう杜撰な面談で薬を処方してるとか、その患者の遺産で相当潤っているとか。遺体を違法に廃棄したとか。
そもそも、こういうことをPADと言ったり、PAS(Physician-assisted suicide)と言ったり、安楽死・尊厳死と書かれていたりして、まだまだ非常に混乱しているのも感じます。
最後になりましたが、東洋的仏教的な教養をバックボーンに持っている…

かば・きりん:…。(苦笑)

かわうそ:…。とにかくそういう私からすると、人間が生き物の生き死にを自由にしようなんて、相当おこがましいとは思いませんかね?

かば:それもブラックジャックですね。本間丈太郎先生のセリフ。